作業療法士の業務は医師の指示の元で実施することが定義されており、作業療法士の資格で独立開業することはできません。
ただし、健康やスポーツ分野を対象にしたサロンや研究所、ジムといった名目であれば無資格として独立開業は可能です。
もちろん無資格なので各種保険が使えない自費診療になります。
実際に独立開業する作業療法士はいますが、経営に失敗してサラリーマンへ戻ってしまう人も少なくありません。
私の同期で就職3年目で個人の治療院を独立開業したAさんという作業療法士がいます。学生時代から頭が良く、就職してからも勉強熱心のある方でした。
結果からいうと開業1年6ヶ月を迎えたところで自身の治療院は廃業。結局は病院勤務に戻って現在もサラリーマンをしています。
なぜ独立開業に失敗したのか原因を聞くことができたので、作業療法士の独立開業がどれだけ難しいのかをご紹介していきます。
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治療技術はあったが集客ができなかった
作業療法士で治療院やサロンを独立開業する人は医学やリハビリ分野の知識に長けていて、独自の治療技術をもっている方がほとんど。
治療に関しては申し分ないのですが、だからといってお店にお客が来てくれるとは限りません。
作業療法士は治療技術はあっても集客のやり方はまったくの素人なのです。
独立開業したAさんも集客するための広告やマーケティングの知識はゼロ。「人がたくさん集まる場所に店を出したら大丈夫でしょ!」という安易な考えから福岡県の博多区という都市部に出店しました。
しかし人はたくさんいるのですが、1日の来客数は5人程度。客単価3,000円~5,000円なので店の家賃を差し引くと、とても黒字化は難しい状況だったそうです。
治療院は競合するライバルが多い激戦分野
福岡県博多区という大都市に出店したにも関わらず、Aさんが出店した治療院にはお客が集まりませんでした。
治療院の対象となる人はターゲットとなる地域にたくさんいたのですが、競合するライバルを調査せずに出店したことが廃業の原因でした。
個人開業の治療院と競合するお店は非常に多いです。
- 病院の通院リハビリ
- 整骨院・接骨院
- スポーツジム
- 個人開業の治療院やサロン
- フランチャイズのマッサージ店
特に最近はフランチャイズのマッサージ店の進出がかなり加速しました。
都市部はもちろん、郊外の地域でも「60分3,000円で揉みほぐし」という看板が目立つようになり、個人開業の治療院はかなりのお客を奪われています。
個人治療院を開業するならターゲットとする地域内で競合するライバルがどれだけいるのかマーケット調査ができないと必ず失敗することになります。
治療できないとお客に返金しないといけない
Aさんのお店は治療院だったので、病院のリハビリに通っても痛みや機能回復しなかった患者がターゲットでした。
知識豊富なAさんが治療しても回復しない患者も多く、治療したのに回復しない場合には治療代金を返金していたそうです。
病院や接骨院、マッサージ店は患者が回復する・しないに関わらず代金を受け取ります。
しかし、個人の治療院は治療をしても回復しなかった場合は代金を受け取りにくいという雰囲気があります。
治療をしたのに1円にもならない患者がいると売上が上がらないのは当然。どれだけ治療技術があっても回復の見込みがない患者は一定数いるので売上に繋がらない仕事をしなくてはなりません。
【まとめ】作業療法士の独立開業はおすすめしない
治療院を開業したAさんを例に独立開業の難しさを解説しました。
健康・スポーツ分野は非常に競合するライバルが多く、保険診療ができる整骨院や接骨院でも廃業するケースが増えています。
治療技術だけでなく広告宣伝力やマーケティング、患者のコネクションがないと作業療法士の開業は失敗します。
競合ライバルの多い現在では、治療院の個人出店は正直言っておすすめしません。
作業療法士ができる起業や副業の方法は治療院だけではないので、さまざな選択肢を知ることから始めてみるとよいでしょう。