作業療法士の給料は安いという話を聞いたことはありませんか?
平均年収.JPによると、作業療法士の平均月収は27万3500円。社会保険料などを差し引いた手取りは約21万5,000円になります。
「意外に高いじゃん!」と思われるかもしれませんが、実は数字のトリックがあり手取りが21万円以上ある求人は一握り。
実際の転職市場での作業療法士の求人は手取りが20万円以下の求人案件がほとんどを占めています。
作業療法士は経験10年目以上のベテラン層と5年目以下の新人・中堅層では給料がまったく異なります。
作業療法士【OT】の年代別の給料
作業療法士の年代別年収と月収です。年収はボーナスを含んだ平均年収となっています。
年齢層 | 平均年収 | 平均月収 |
20~24歳 | 337.0万円 | 22.0万円 |
25~29歳 | 406.8万円 | 27.0万円 |
30~34歳 | 435.1万円 | 30.3万円 |
35~39歳 | 491.3万円 | 34.0万円 |
40~44歳 | 521.5万円 | 36.4万円 |
45~49歳 | 530.9万円 | 37.0万円 |
50~54歳 | 546.万円 | 37.6万円 |
55~60歳 | 522.5万円 | 36.1万円 |
60~65歳 | 435.1万円 | 24.6万円 |
参考:平均年収.JP
この表だけを見ると、40代の作業療法士は年収500万円以上でとても高収入に見えますね。
たしかに、初任給の高い病院に就職し、昇給し続けて役職に就いている場合は500万円に届くかもしれません。
現在は初任給が年収400万円以下(手取り約19万円)の求人がほとんど。そのため、今の若い世代が40歳になっても年収500万円には届きません。
平均給料を引き上げているのは診療報酬が高くて作業療法士が少なかった時代に就職したベテラン層です。
20代作業療法士【OT】の手取りは20万円以下がほとんど
20代の平均年収は337万円。月収にすると22万円です。
この月収から社会保険料や税金が引かれるため、実際に貰える給料(手取り)は約17万6000円となります。
会保険料とは
健康保険、雇用保険、厚生年金、介護保険(40歳以上が)といった病気や労働中のけが、老年や死亡に対して保険が適用される公的な保険。
サラリーマンの税金
サラリーマンは給与の総額に対して、税金を差し引かれた金額が給料として支給される。税金の種類は主に所得税と住民税。ちなみに、サラリーマンの収入とは別に副業収入があった場合、副業収入分は自分で申告して別途税金を納める必要がある。
新卒1年目は住民税が課税されないため手取り額が多くなりますが2年目以降は約1万円の住民税が課税されるため手取りは少なくなります。
意外と大きい!住宅手当や訪問手当
一人暮らしの場合にポイントとなるのは住宅手当が支給されるかどうか。
住宅手当は一般的に家賃の半額~2万円ほどが支給されるため収入に大きくプラスされる手当です。新卒者で一人暮らしをする予定であれば、住宅手当が出るのかどうかを必ず確認しておいてください。
また、訪問リハビリや訪問看護ステーションの訪問系は訪問1件につき訪問手当がプラスされる会社があります。
訪問手当の金額は訪問1件につき200円~1,000円が相場。
1ヶ月で100件の訪問で訪問手当が1,000円だと月収10万円が給料にプラスされます。かなり大きな金額ですよね。
訪問系の仕事に就職を考えているのなら訪問手当の金額と1ヶ月あたりの訪問件数を確認しておくとよいです。面接時に聞けば普通に教えてくれます。
関連記事▶資格手当の相場・平均はいくら?基本給や通勤手当、皆勤手当も解説
作業療法士【OT】勤務地・役職・経験年数による給料の違い
作業療法士の給料は勤務地・役職・経験年数によって給料が異なります。
新卒の場合は勤務地を選ぶことができるので、平均年収の高い地域で就職するのもポイント。
また、定年まで1つの会社で勤務したいのであれば役職や昇給がいくらあるのかも就職する前に確認しておきましょう。
都会は高収入!?勤務地・地域・都道府県での給料の違い
作業療法士は都道府県によって平均年収に違いがあります。
人口が多い都市圏の都道府県は年収が高く、地方は年収が低い傾向にあるようです。
東京 | 405.8万円 |
---|---|
大阪 | 386.4万円 |
福岡 | 322.0万円 |
宮城 | 322.0万円 |
---|---|
鳥取 | 289.8万円 |
佐賀 | 257.6万円 |
※作業療法士の統計データがなかったため、医療事務の都道府県別データを記載しています。
都市圏は求人数が多いのでいろんな選択肢の中から求人を選ぶことができるというメリットがあります。
また、人口が多い都道府県でも郊外や人口の少ない地域は平均年収が低い場合もあるので、都道府県の中でもどの地域に住むのかも大切な要素となります。
病院・訪問看護が人気!勤務形態による給料の違い
作業療法士が勤務できる勤務形態は以下の通り。作業療法士は精神科での求人が多いことが理学療法士との違いです。
- 大病院(救急・総合)
- 中小病院(専門、精神科など)
- 個人病院・クリニック
- 訪問系(訪問リハビリ・訪問看護ステーション)
- 介護施設(デイサービス・老人保健施設・有料老人ホームなど)
- 障害者施設(放課後デイサービスなど)
新卒者に人気なのはやはり病院勤務。場所によっては初任給でも25万円以上貰える病院もあります。
しかし、高額求人はハローワーク等の一般募集では出にくく、養成校だけに直接募集を出している場合が多いです。
そのため、転職で高額求人を狙うには卒業した学校の先生に求人を紹介してもらうという方法も有効です。
転職で人気のある求人は訪問リハビリや訪問看護ステーションといった訪問系。
訪問手当てが付くので高収入の求人が多いです。最近では高収入を狙って新卒から訪問系に就職する方も多い傾向にあります。
しかし、一般募集では訪問系でも給料が安い求人があり、作業療法士の業界全体での給与水準の低下を感じるようになりました。特に個人経営の訪問看護ステーションは地域内での事業所の供給過多が原因で給料が低くなっています。
一方でデイサービスや老人保健施設といった介護系のは給料が安い傾向にあります。
特に個人経営の小さな会社はの利益次第でボーナスが出なくなる会社もあるので注意が必要。給与形態もアバウトなので面接時に給与についてはしっかりと確認するべきでしょう。
おすすめ記事▶職場の人間関係の悩みを解決!上司や看護師とうまく付き合うコツ
ヒラ社員が多い!役職による給料の違い
作業療法士の役職手当の相場は、月収で5,000円~10,000円がプラスされる程度です。
作業療法士などのリハビリ職種は役職が少ないことが特徴。一般的な会社であれば部長・課長・係長・主任・副主任といった役職がありますよね。
リハビリ職種では作業療法士と理学療法士の全員の中で部長1人・主任1人の合計2人しか役職がいないという職場も多いです。そのため、作業療法士は役職手当が付きにくい業界と言えます。
しかし、幹部との交渉によっては特別に高額の役職手当が付く場合もあります。
役職を狙うのであれば、現在の上司が役職に就いたことによっていくら給料がプラスされたのかを聞くのが確実でしょう。
経験年数による給料の違い
作業療法士の経験年数による平均年収と平均月収です。
経験年数 | 平均年収 | 平均月収 |
1~9年目 | 337~406万円 | 22~27万円 |
10年目以上 | 435~491万円 | 30~34万円 |
15年以上(役職) | 521~546万円 | 36~37万円 |
※年齢別の平均年収から算出
作業療法士の経験年収による給料は勤務形態や転職の有無によって大きく異るので、上記の表通りにはならないことがあります。
経験によって給料が高くなるパターンは3種類。
- 初任給が高額な会社に就職。転職をせずに昇給・役職が付く
- 特殊な技能を身につけて転職(ヘッドハンティングされる)
- 個人の治療院や訪問看護ステーションなど独立自営をする
最も実現が簡単なのは『①初任給が高額な会社に就職。転職をせずに昇給・役職が付く』ですね。昇給が年間で5,000円~10,000円あれば15年目くらいには月収30万円以上も十分に可能です。
ただし、昇給が年間で5,000円~10,000円も付く会社は一握りしかありません。
ハローワークなどの一般募集では条件の良い案件はすぐに定員が埋まるので常に求人に対するアンテナを張っておく必要があります。
『②特殊な技能を身につけて転職(ヘッドハンティングされる)』
『③個人の治療院や訪問看護ステーションなど独立自営をする』
この2つは相当な努力が必要であることは言うまでもありません。
作業療法士という資格は独立ができないので、医療保険が適応されない治療院もしくは柔道整復師の資格を取得して整骨院での独立をすることになります。
関連記事▶作業療法士【OT】治療院の独立開業に失敗した体験談。起業のデメリットを解説
他の医療・福祉・介護職種の平均給料はいくら?
作業療法士とよく比較される他の医療・福祉・介護系資格の平均給料をまとめてみました。(平均年収.JPのデータを引用)
作業療法士として働きながら他の資格取得を目指すことも、給料や働き方を変える上で有効な手段です。
看護師の平均年収
看護師の平均年収は526万円です。平均月収は約37~39万円。
かなりの高収入に見えますが、大病院の看護師長クラスの年収も入っているので平均が引き上げられていると思われます。
ハローワークなどの一般募集では年収400万円を超えるくらいの求人が多いです。
看護師は夜勤手当てが付く病院や入居型の介護施設の給料が高めになっています。
一方、夜勤のないクリニックや介護施設では年収400万円に届かない求人もあり、やはり会社によって給料にバラツキがあるようです。
作業療法士の給料に比べて、看護師の給料はやや高い~同じ水準です。
薬剤師の平均年収
薬剤師の平均年収は585.6万円です。平均月収は約38~41万円。
薬剤師は医療系資格の中でも医師の次に高給取りな職業。
大手薬剤チェーンの拡大やドラックストアでの求人が増えたことから、どの地域でも求人が豊富にあります。また、看護師や作業療法士と違って平均以下の安い求人が少ないことが特徴です。
ただし、薬剤師の資格を取得するには6年間も必要で学費も高額。作業療法士で働きながら薬剤師の資格取得は非常に難易度が高いと言えます。
ケアマネジャー
ケアマネジャーの平均年収は394万円です。平均月収は約28万円。
ハローワーク等での一般募集では月収20万円に届かない低賃金の求人が多く、感覚的な平均年収は330~340万円ほどになると思います。
作業療法士や介護福祉士などの資格があり、実務経験5年以上あれば試験・研修を受ければケアマネジャーの資格を取得することができます。
働きながら取得できるので、有資格者が多いため、ケアマネジャーは作業療法士よりも給料が安い求人がほとんでです。
実は作業療法士はケアマネジャーの資格を取得している方が多くいます。「年をとって肉体労働ができなくなったときに、事務作業ができるから」という理由をよく聞きますね。
【まとめ】作業療法士で高収入を目指すには
作業療法士で高収入を稼いでいる人は新卒で条件の良い会社に就職し、転職をせずに昇給し続けたパターンがほとんどです。
転職市場ではハローワークを見ても平均年収が400万円未満、つまり手取りが20万円にも届かない求人が多くを占めています。
転職で条件の良い求人を見つけるには常に求人に対するアンテナを張っておき、好条件な求人が出たときにすぐ対応できるよう準備をしておくことが必要になります。